写真旅

望父

 

 

一枚の写真旅。
友人Nが昔から大切に部屋に飾ってあった一枚の写真。
記者だったNのお父さんが取材していたところ「いい髭してるね~」と監督に気に入られ、急遽牧師役に抜擢されたとのこと。

今年の元旦、酒を片手にいかにこの写真は素晴らしいか…云々と御託を並べた私にNが「この父の姿を映像で見たい」と。
そこから写真旅が始まった。
この写真を見て分かるのは
① 中井貴一氏が出演している映画orドラマ
② 結婚式のシーンがある
③ お父さんが髭を生やしていたのは今から20~25年ほど前
④ お父さんの仕事柄北海道と関連がある?
仕事の合間をぬって各々で調べ、夜中の電話会議を重ね、これだ!!と見つけた映画「ラブレター」。
ドキドキしながら見ると写真そっくりの花嫁が北海道にいるシーン。
きたーーーーっ!と二人とも画面にかぶりつく。…が、そこで「完」。漬物石を乗せたかのように肩を落とし、その日はお酒を飲む気もおこらず帰路につく。そしてまた一から研究しなおし、目についたのは中井貴一の制服。
商船出身の私は見覚えがあり、これはきっと船乗り等の海関係の制服だ。それ故中井貴一氏が海上保安庁飛行士役で出演した「新 喜びも悲しみも幾歳月」ではないかと提案。
Nは年代的にこの映画は違うと思うと反論。そして、探すのに疲れ切ったNはもう無理なんじゃないかと言い出す。
それにカチンときた私は「諦めたらそこで試合終了なんやぞ!」と安西先生のお決まりのお言葉を拝借。いつもならのってくるNだが、相当疲れていたのか「ブルーレイが主流の時代にvhsがたまっていくこっちの身にもなってみろ」と反論。結果、喧嘩勃発。
二人とも落ち着いたころ結局Nが折れてくれ、その映画を見てみることに。願掛けで、Nとお父さんが待ち合わせをしたことのあるハチ公前で待ち合わせ、また親子二人で食べたことのある鰻屋…は予算の関係上諦め、その代わりにラーメンを食す。「景気付けにビール飲もうか?」と私。「絶対寝るなよ」とN。念のため気持ち小さめのビールを選び、お腹いっぱいで鑑賞開始。1時間ほど経った頃、案の定私はいつの間にか…。
心地よい眠りについたとき、Nに鼻をつままれ「苦しいやろが!」と目を覚ますとNが何も言わず画面を指指してました。そして、指の先には…。「ほら、私の言ったとおりやろ~!」
「寝てたくせに。」
「……。」
何度も何度も巻き戻し、お父さんの姿を目に焼き付けた。その後二人で祝杯をあげ、Nが一言放った言葉は、
「俺、髭伸ばす。」

私はそのとき、父親の背中を見て育った一人の青年を見た。

一枚の写真から始まった4ヶ月間の写真旅。
素敵な時間をありがとう。